メタル・サイドの見方からすると「VINNIE VINCENT INVASIONの1stで歌っていた人」というイメージが強いロバート・フライシュマン。V.V.Iの1stでは、ヴィニーの半魚人顔もさる事ながら、ひとりだけニュー・ウェイヴな髪型をしてムチを持っている…というスタイルで唖然とさせたこの人が、まさかこんなキャリアの持ち主だとは思いもよらなかった。本作は'79年のファースト・ソロアルバムで、'82年には遅れて国内盤もリリースされている。驚くべきキャリア(ファンには有名なことのようですが)というのは、この人がJOURNEYの"Wheel In The Sky"、"Winds Of March"といった名曲群を、バンドのメンバーと共作した人という事実。しかも、スティーヴ・ペリーが正式メンバーとして参加する直前まで、この人で『INFINITY』のヴォーカルはほぼ決まりだったというから驚き。そんな人だったなんて…という感じだ。マニア…というか、長年のファンには「INFINITYのメロディ源泉＝ロバート」という見方もあるらしい。このソロ・アルバムの内容も、まさしく『INFINITY』でやっている産業ハードを、独特のハイトーンで再構成したかのような印象だ。実際に、楽曲クレジット＆演奏にニール・ショーンも参加しているし、『INFINITY』時のアウトテイクも含まれているかもしれない。本人のヴォーカルは、非常にレンジが広く、ハイトーンの出方が強烈。信じられないかもしれないが、マーク・スローター風に聞こえてしまう箇所もある。確実な才能がある人だからだろうが、現在でもミュージシャンとして活動を続けており、最新ソロ・アルバムも間もなくリリースされる予定とのこと。 (hatch)
FACE TO FACE / THE FAITH BAND
詳しい素性は全く分からないアメリカの5人組。勿論、もともと知っていたバンドではなくて、ジャケットの雰囲気に惹かれて衝動買いしてみた100円盤の1つである。サインペンで手書きしたようなバンドロゴ、薄茶色にくぐもったメンバー写真の雰囲気、"Hopeless Romantic"、"Diamond In The Rough"といった曲名…等から、メロディック・ロックの匂いが漂ってきたので(笑)ジャケ買いしてみた。これは'79年にリリースされているアルバム。一瞬フュージョンかな？とも思ったけど、これはまあメロディック・ロックと言ってよい内容だと思う。ヴォーカルがあまり上手くないことが難点…というのは多くのバンドに共通するところだが、楽曲の出来はまあまあといったところ。特にA(1)"Touchy Situation"は、淡々としたリズムでありながら、ギターリフそのものに泣きがあって、じわじわ来る…というタイプの曲で、アルバム1番の出来となっている。適切な例えではないかもしれないが、私はEddie Moneyの"Life For The Taking"を思い出した。延々と弾きまくるギター・ソロが、そういう印象を与えたのかもしれない。A(2)以降は、楽曲は悪くないんだけど、やはりヴォーカルのヘタウマぶりがちょっときついかなぁ。全般的にはやはり産業マニアの参考作品の1つといったところだろう。 (hatch)
BEYOND BELIEF / PETRA
コンプリートすることをライフワークと決めている(？)アメリカのクリスチャン・ロックバンドが'90年に発表した通算14枚目の作品。プロデュースはジョン＆ディーノのエレファンテ兄弟。素晴らしいメロディを持った楽曲をジョン・シュリットのクリアーなハイトーンが歌う…という、「定番化」と表現したくなるほど安定感のある高品質な作品だ。HRと呼ぶには爽やかすぎて、ポップスと呼ぶにはちょっとハード…という昔から変わらない音楽性は、まさしく産業ロックと呼ぶにふさわしい。それにしても、SURVIVORあたりが'90年代以降、割と再評価されているのに、このバンドはなぜ語られることが少ないのだろう？ ボブ・ハートマンの才能は、決してジム・ピータリックに劣らないと思うのだが…。やはり、クリスチャン・ロックというフィールドが、それだけ閉鎖的というか、狭く閉じたジャンルということなのだろうか。楽曲は全体的に粒揃いだけど、何と言っても素晴らしいのが(3)の"Creed"。この曲でのシュリットのヴォーカルは、まさに天まで届くのではないかと思うほど美しい。普通、年をとると艶や張りを失ってくると思うのだが、このアルバムでの歌唱はHEAD EAST時代をも上回っているのではないか？と思ってしまう。いろんなアルバムをしつこくレビューしているけど、少なくともメロディック系ファンにはこのバンドのことをもっと知ってもらいたいと思う次第。 (hatch)
