KONCERT W TROJCE 1991-2001 / MOONLIGHT
 ARTROSISのライヴ・アルバムの感想を書いたので、同郷ポーランドの女性Vo擁するゴシック・メタルの'01年リリースのライヴ・アルバムもいきましょう。最初はこのバンドの方が好きだったんですが、今はすっかりARTROSISの方が好きです。で、このバンドもまったりしていて、音楽性は似てます。民族音楽っぽいものを導入しているのは違うところでしょうか。で、ライヴ前に男性の司会者?のバンド紹介から始まります; このバンドも名曲なしと思っていたのですが、意外と記憶に残っている曲が少なくなかったです。民族音楽っぽいメロディをアカペラで歌い、そして本編が始まる"Tabu"は名曲レベルかも。"Taniec Ze Smiercia"はこのバンドにしては元気な曲です。ふわふわ優しく歌っているおねいさんが、力入れて歌っているのがいいです。そしてMOONLIGHTコールの中、アンコールが始まります。おねいさんのポーランド語と思われるMCの後、"To Nic Nie Dato Przyjacielu Moj"は演奏途中で、おねいさんが歌メロをお客さんと合唱。なんか暖かい雰囲気が伝わってきて、ぞくぞくしちゃうかも。更にもう一度アンコールがかかり、"Publicznosc"という民族音楽っぽい曲をお客さんとアカペラで歌っています。恥ずかしそうに歌うおねいさんがとてもいい!   (純生)


TUNES OF DESPONDENCY / THALARION
 欧州はスロバキア産Death / Gothic Metalによる4作目『TUNES OF DESPONDENCY』を初めて聴いたとき、時には嵐のように激しく、時には庭園に咲く百合のように甘くエレガントな香を漂わせるヨーロッパ屈指のロマン派Thalarionが奏でるドラマにある種の憧れを感じた。相変わらずヒーリング音楽が大活躍しつづけているけれども、そんなご時世であっても癒しの定義というものは十人十色だろう。寝ている間にみる夢とは明らかに異なるタイプの非現実世界…ヨーロッパ旅行の経験があるためかいつでも頭の中に思い浮かんでくる映像はヨーロッパと深い関係にあるものになってしまうが…色とりどりの花が咲き乱れ甘い香が充満している誰もいない公園を歩いていると、どこからともなくヴァイオリンの音が聞こえてくるみたいなシーンは自分にとって実際には極めて低い確率でしか起こりえない事象であるからこそ、憧れてしまう…そんな夢見がちな自分を短い間であるものの憧れの地へと導き乾いた心を潤してくれるのが、他ならぬゴシック・メタルだ。女性Voをフィーチャーしたゴシック・メタルは今ヨーロッパで相当の人気を博しているという話は何度か耳にしたことがあるが、周りにはクラシックをはじめジャズやその土地その土地に息づいている伝統音楽など多種多様の音楽が存在し、常にそれらと接する機会を持っているなど恵まれた創作環境にあるため、ヨーロッパからは豊かなセンスをもった新星がこうも相次いで登場するのだろう。THALARIONに話を戻すが、シンフォニックなkeyの響きや複雑な展開をする楽曲群はオランダ産AFTER FOREVERを彷彿とさせるが、よりアグレッシヴな音作りをしていることや女性Voがクリーン・ヴォイスとデス・ヴォイスを巧みに使い分けているところが違っている。また、曲によっては素材としてアルト・サックスを用いてJazz / Fusionのようにムーディーな雰囲気を作り出すなどアレンジ面での確かなセンスを感じさせるとともに、わずかながら他の同系統バンド群と差別化を図ることに成功している。芸術、建築の分野においても他の追随を許さないヨーロッパには博物館・美術館が沢山あり、その佇まいの素晴らしさで見るものを圧倒している。美術とは全く縁のない生活をしてきた自分であるが、ここ最近は絵を見る楽しさが少し分かってきたのかなと思うようになってきた。『TUNES OF DESPONDENCY』の緑を基調としたアルバムジャケットを目にしたとき、これからどのような物語が展開されるのだろうかと好奇心を持たずにはいられなかった。〜悲しみと喜びが共存する風景〜この表現が適切かどうかは分からないが、アートワークを見て思い浮かんだ一文である。哀愁美という言葉とヨーロッパという言葉は≒で結べそうなくらい、密接な関係にあるとつくづく感じる今日この頃…ブルータリティを強調したblack / death metalは嫌いではないが、やはりメロディが素晴らしいものの方により高い評価をする傾向にある自分にとって、哀愁旋律は決して捨てることができない要素の一つである。ここまでヨーロピアンメタルに入れ込んだのも、今述べた哀愁旋律のためである。「テクニックよりも雰囲気を重視したヘヴィメタルを聴きたい!」と思うようになった自分のニーズに応えうるものを長い間探しつづけた結果、最後の砦【ゴシックメタル】に行き着いた。EDENBRIDGE, NIGHTWISHなど女性Voをフロントに据えた正統派 / 様式美メタルに慣れ親しんでいたせいか、それほど抵抗を感じることなくゴシックというスタイルを受け入れることができた。以来数多くのグループによる作品を聴いてきたが(試聴も含めて)、印象に残っているものの殆どは哀愁美によって装飾された神秘の王国=ヨーロッパ産である。またまた話が横道にそれてしまって恐縮だが、CDを買う際自分は出身地による差別・偏見はしていないつもりだ。しかし、アメリカ産HM、ヨーロッパ産HM作品が隣同士で並んでいたら、やっぱりヨーロッパ産HMを購入する可能性のほうがもう一方を遥かに凌いでいるのが事実であることもここで告白しておこう。DECAPITATEDやVADERのように驚異的なテクニックを惜しげなく披露してくれるデス・メタル・バンドだけではなくDELIGHTなどゴシック・メタル勢も大健闘しているポーランドをはじめ、東欧各国からは超新星が次々とシーンに送り出されている!! 東欧の一国であるスロバキア出身のHR / HMに関しては全くといってもいいほど知らないので、THALARIONとの出会いを機に同郷バンドについてもリサーチしてみようと思う。前置きがかなり長くなってしまったが、ここで特に気に入っている曲について簡単に述べてみたい。Keyによる華麗な演奏が心の琴線を振るわせる1曲目、静と動のコントラストが美しい2曲目、思わず聴き惚れしてしまうスラッシーなギターリフ満載の7曲目はヘドバンして下さい!と言わんばかり…ダークなギターフレーズが適度な緊張感を生み出している9曲目などなど。Black、Death、Gothic、Thrash等々あらゆるメタルを融合させたかのような音楽は起伏に富んでいるので、最後まで飽きることなく聴ける。女性のデス・ヴォイスが全く気にならないという人で、AFTER FOREVER,WITHIN TEMPTATION系のゴシックメタルが好きな人達にお薦めしたい!!THALARION、要チェックだ!!     (Windia)


METAL DREAMS VOL.3 / V.A.
 NUCLEAR BLASTレーベルが'01年にリリースしたバラード・コンピレーションの第3集目。既発テイクばっかりで、サンプラーじゃないので値段は安くはないのですが、普通のメタルに混ざってゴシック・メタル勢も多数収録しているので、気になってしまうコンピです。ANATHEMA"Pitiless"は全然バラードでも何でもないような気がしますが…最新作からの曲だけに静かに熱くプログレッシブな曲です。再結成するという話のドイツのKey入りゴシック・メタルCREMATORYはピアノをバックにした普通声の"Perils of the Wind"…大好きな曲です。オランダのゴシック・メタルORPHANAGEは女性Voの美しくも暗い曲。切々とした歌メロがとても好きです。そして、このコンピの一番素晴らしいこと、というか購入のきっかけになったのは、イスラエルのゴシック・メタルORPHANED LAND"The Beloved's Cry"が収録されていることです。しかも、アルバムの最後ですよ。女性Vo入りの切なくなるような暗い曲です。この曲は1st『SAHARA』にも収録されているのですが、1stのリリース元のHOLYとNUCLEAR BLASTは特に無関係な感じなので、HOLYじゃないところからリリースされた初期デモ音源集収録のヴァージョンではないかと思ってます。って、聴き比べていないんですけどね; うーん、新譜は出してくれないのかなー; NUCLEAR BLASTから3rdを出すという情報があったのはかなり昔のことですよ。他にはHAMMER FALL, AMORPHIS, HELLOWEEN, STRATOVARIUS, PRIMAL FEAR, NIGHTWISH, NANIA, ICED EARTH, LACUNA COIL, THE GATHERING, PARADISE LOST, NEVERMORE, OPETHを収録。   (純生)